45  きんいろの皇帝が跪く 01




 
  いっ・・・・・いいいいいるっ・・・・!!★*□◎?θ@!! い、 る !!

 

 何がって、アイちゃんが。




 三橋は、 西浦高校野球部のマスコット犬、 百枝 アイ(♀) に行く手を阻まれていた。
 三橋の足は まるで地面にむかって根が生えたように、 うごかない。
 一歩も踏み出してはくれない。

 鼻歌交じりで練習用具を取りにきたものの。 倉庫まえには難関が待ち受けていたのだ。
 
 アイちゃんは じぶんで首輪をはずしてお散歩中だったらしい。
 グラウンドを 自由気ままに探索中の彼女に 三橋が出会って、 今に至る。


 ( どどどどどうしようっ にげ、にげな、 きゃ ) 


 でもわかっている。先に動いたほうの負けだ。 べつに勝負してないけれど。
 長年の経験で、イヌは逃げる者を追う動物だと、知っていた。
 

 助けを待つにも誰かが来る気配はまったく無い。
 

 アイちゃんは 人懐っこい目で三橋を見ている。しっぽも フリフリしている。
 そして わんっ! と三橋にひと鳴き。
 
  『みはしさん、 いいおてんきね。 きょうも やきゅうするのね?』

 おそらくアイちゃんは、親しみを込めてこう言ったに違いない。
 でも悲しいかな、 アイちゃんの言葉は 通じないわけで。


 「ひっ、あっ、 んううっ あ ふあ、」

 ちょっと阿部が聴いたら鼻血出しそうな声で、 三橋は応えた。

 アイちゃんが三橋に向かって翔けて来た。


 ひらり、


 と小さな彼女の体が跳躍する。

 アイちゃんは、 三橋の胸に、飛び込んだ。



 「ふんぎゃああああああああっ!!! たすけてええええええええっ!!!!!!!」


 朝もやに光射し込む グラウンド一帯に 三橋の絶叫が、響き渡った。
 
 





























































































 「ん?」

  
 悲鳴に真っ先に気が付いたのは、 栄口だった。
 切実に助けを求めている、 そんな声。


 みはしだ

 そう察した瞬間、
 叫び声のする方角へ とっさに 全力で 栄口は駆け出していた。























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