初めてです。笑ったのは。(おおきく振りかぶって) 03
打開策はなかなか出てこない。病院へ行ってみるかと栄口がため息を吐きかけたとき、 巣山が突然しゃべった。 「なあ、“笑わない王様”が出てくる昔話って、なかったっけ?」 「それってゲームじゃないの?」 「昔話?金のガチョウか?」
「“わらわないおひめさま”っていう絵本は読んだことある気がする。」
何人かが、話に乗る。 栄口には心当たりの無い話題であった。
思うんだけど、と巣山が言う。 「共通しているのはさ、 どんなに無理やり笑わせようとしても 王様やお姫様は絶対に笑わないってことなんだ。」 「そうか。だとすれば、俺達がここでコントしても駄目なのか。」 まいったな、と花井が気の毒そうに言った。
「ねえ、笑いのツボって人によって違うよね。」 西広が何かを思いついたらしい。みなの注目が彼へと向かう。
「自然に笑えるように、栄口の笑いのツボを、常に、押さえておけばいいんじゃないかな。」
栄口の…笑いのツボ??? 笑いの素?? 栄口が笑っているとき、いつも側にあったものといえば。
野球部全員、まさかっ!!?っと気が付く。三橋以外は。
「栄口ってさ、」 西広は言葉を続ける
言うな。それ以上言うんじゃない、西広。
その場にいる一部の数名が、心の中で念じた甲斐はなく。 「栄口の笑いのツボって、三橋じゃなかったっけ?」
言ってしまった。ぎりぎりぎり、煩悶する人間が発生した。
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