75.ダウトコール 06-1 |
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(ミ・ズ・タ・ニ……)
(ん?)
名前を呼ばれたような気がして、声が聞こえた方角へ顔を向ける。
隣にいた沖が、
思わず聴き逃してしまいそうな小声で口をパクパクとさせていた。
丸い大きな眼が水谷になにかを訴えかけようと見つめていた。
(な、なに?)
水谷が同じように小声で応えると
沖は、三橋と水谷を交互に見比べたあと、ある一方向を目で指示した。
(あ)
沖が見つめていた方角には、唯一の脱出口といってもいい細い道。
ちょうど阿部と泉には死角となっている。
(オ・レ・ニ・マ・カ・セ・テ…)
(う、うん?)
(ニゲロ)
(…わかった)
ふたりは、コクリと頷きあい、阿部の前で挙動不審に首を揺らす三橋を見つめた。
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