75.ダウトコール 05-2 |
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「…と、いうわけなんだ」 泳がされているとは露知らず。
と、いうわけで沖たち泥棒チームは逃げている。
「…西広先生、恐るべし。すっげえ〜」 引きつった笑顔を浮かべて水谷が仰け反った。
「にしひろくん、は…すごく、頭いいっ…よね!!」 己の危機をまったく感じない様子で三橋が同意する。
すっかり仄暗くなってしまった森林の合間を駆け抜ける五人の少年たち。
ザザザザ、と低木の葉を掠めながら次なる安全な場所を目指して急いだ。
だが、せっつく気持ちを抑えて、巣山が足を止める。
「巣山、どうしたの?」 先を走っていた田島が、怪訝な顔で振り返る。
巣山は眉根を寄せて、低く呻いた。
「やな予感がする。全員で同じ場所に行かないほうがいいかも」
「二手に分かれる?」
「そうしよう。で、俺と田島はいざってとき囮になるのも兼ねて、目的どおりの場所に行こう」
「りょ〜かい!」
「じゃあ…俺と三橋と沖はどうしよう?」
「三人一緒に適当なところへ隠れてもいいし、バラバラでもいいから別方向に逃げて」
「ん、わかった。行こうぜ三橋、沖」
「巣山、田島、健闘を祈る!!」
「おう、気をつける。そっちもな」
「グッドラック!!」
「生きてまた会おう!!」
「ま、また、ね〜」
人間危険が迫るほど、追い詰められるほど、たかがゲームでも愉快にノリノリになるのは何故だろう。
いまや泥棒チームの五人は、戦場で同じ釜の飯を食ったくらいの結束力だった。
そして策士・西広はここまでも読んでいた!
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