「う、うう・・・ど、 どこ・・・?」
逃げ出そうにも見当違いの方向に走ってアイちゃんと鉢合わせするのは困る。
きょろきょろ、 きょろきょろ、 とあたりを警戒しながら、
野球部マスコット犬の影を探す。
で、大幅に遅れて、 目の前に立っている花井の存在に気がついた。
どうしてだか、花井は決まりの悪そうな顔で三橋のことを見ている。
「う、あっ、 は、ない、くん? ああ、あの、 アイちゃん・・・、 い・・・いる・・・?」
半べその、すがるような三橋の目。 でも視線は花井のそれとかみ合わない。
胸元をギュ、と握り締める手は白くて、小刻みに震えていた。
はあ。 そんなに怖いか。
・・・アイちゃんが?
・・・・・・俺が?
花井は内心ため息を吐く。(実際にやれば三橋がまた余計な方向へ解釈するからだ)
「スマン。 今さっきのは、はったりだ」
「は・・・?」 三橋は理解していない。
「アイちゃんが来るのは嘘だっていってるんだよ」 呑み込みの悪い三橋に 花井は焦れる。
「え?・・・え? うそ・・・なの?」 三橋はなぜ花井がそんな嘘をついたのかわからない。
「ひょっとしたら三橋がここらへんに隠れているんじゃないかっておもって、 脅しかけてみようとしたんだよ」
花井はちょっとやけっぱちになる。
「!!!」 三橋の眼から涙がパタパタと零れた。
「んな!?」 花井に動揺が走る。 同時に、 原因のわからない怒りと、寂しさが。
三橋の涙はどうして枯れることがないのだろう。
きれいで、 壊れそうで、 そして憎しみを覚える。
そうやって黙って俺を責めるのか。
俺を怖がって、 嫌って、 誤解したまま。
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