75.ダウトコール 00 







 
「い、ろ、は、に、ほ、へ、と、ち、り、ぬ」


「「「 盗人!! 」」」



「を、わ、か、よ、た」

「「「 探偵!! 」」」


ここは西浦高校野球部専用のグラウンドのど真ん中。
野球部員が雁首そろえてなにやらおおきな人の輪を作っていた。
田島が円の中心に立って
人差し指をチームメイトたちに突き出しながら、ぐるぐるぴょんぴょんと軽やかに跳び回っている。




「そんじゃー、組み分けも決まったことだし、始めっか」

「はいはーい、なんでさあ、組み分けのときは 『盗人』 と 『探偵』 っていうのに、 《ケイドロ》なんだろ?」

「そりゃ語呂が悪いからだろ」

「《ヌスタン》じゃ駄目かあ〜」

「はははへんだ」

「そこっ、 始めるって言ってるだろ!」

「じゃ、50秒数えるぞ。 いーっち、にーい・・・」

「阿部!! 急に数えだすなよ!」





そこは西浦高校野球部専用グラウンドのど真ん中。

そこでは今まさに、
ニッポンの伝統的変則鬼ごっこ、 《ケイドロ》 が開始されようとしているのであった。

気になる組み分けは以下のとおり。

















 

【盗人チーム】

氏名        : 特徴


田島悠一郎 : 人並み外れた身体能力、読めない行動はとにかく無敵な四番打者

三橋廉    : キュートな上目遣いと涙で追ってを撒け! みんな大好き俺らのエース

沖一利    : 控えめでいつも心優しい左腕投手。しかし、じつは・・・・・・

水谷文貴      : 適当に逃げ、適当に捕まりそう・・・で、捕まらない、 謎多きクソレフト

巣山尚治      : まづいプロテインがかかわるとちょっと豹変、西浦イチのクールガイ


【探偵チーム】

氏名      : 特徴

泉孝介    : やるからには いかなる勝負にも負けたくはない、俊足巧打の男前

西広辰太郎 : 柔和な容貌、男前ヴォイス(by管理人)田島も黙る、知能犯

阿部隆也   : ほんとうは三橋のハート泥棒になりたい、無自覚な愛の正捕手

栄口勇人   : みんなが怪我なく楽しけりゃいい。三橋はとくに気にしたい、微笑満点副主将

花井梓    : 頭を抱えてもやつらの面倒を見ずにはいられない、頼れる苦労派キャプテン



ルールはいたって簡単、
――盗人は追われ、 探偵は追う。

最終的に、盗人の数を過半数捕まえれば、探偵チームの勝ち。
捕まえられなければ、盗人チームの勝ち。



 
10分前、 我らが監督・百枝まりあの声色は、その甘い優しさに反して無慈悲な言葉を紡ぎ
西浦ーぜ一同の肝っ玉を震え上がらせていた。


「いい? 負けたチームは、 まづいプロテイン1か月分をもれなくプレゼント よ♪」




鬼!!
悪魔!!
冷血!!
○○○!!!
※※※!!!




言いたいことは、 山ほどあった。 巣山は 「実家に帰らせていただきます!!」と泣き叫んだ。
しかし
モモカンに逆らえる部員などいるだろうか? いや、いないよね?

かくして



制限時間は2時間以内。
阿部のよく通る低音の声が50秒を数え終わらないうちに
盗人チームの少年たちは、グラウンドの外へ散り散りに走り去っていった。















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