85 言葉が足りなかったからぶんかいした。 01 |
あずき色のちいさなクッションが、 おれの顔を ペシペシと叩いた。 |
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「どこいくんだよ。」 振り返った幼馴染の顔は、 涙でグシャグシャだった。 その顔に、 叶はいつまでたっても慣れない。 「・・・・ごめっ、 なさっ、 」 「だから、どこ行くんだよって。」 謝るとこじゃないだろ。 ほんとうはそう言いたいのだが。 「う・・・っ。 えと、 じ、ジン、 ジャ。」 「神社?」 とっさにこの山の奥にある、ちいさくてひなびた稲荷を思い浮かべる。 「一緒に行ってもいいか?」 「えっ?」 神社にいったい何の用があるのか、 叶はあえて聞いてこない。 強い意志を秘めた幼馴染の目は、 三橋の答えを穏やかに待っている。 三橋はそのまなざしをキチンと見返せないまま、 涙を落としながら頷いた。 |