94 丸 くなり丸くなり頑なな球形となって 02











「あれ? まだいたんだ。」
栄口がロッカーへ着替えを取りに行ったら、三橋がいた。 



新入部員達は、監督や先生と軽いミーティングを済ませて、 帰宅したはずなのに。
阿部はユニフォーム姿のまま 部室へは寄らずに 帰っていった。



ギョクッ!!!??!!

三橋の驚きようといったら。
人間って、 あんなに高く飛び上がれるんだア。


「
うごっ・・・・っ、ごごごごめ、ごめんな、さっ、い!!!
 
 すすっ、す・・・すぐ、すぐ、 か、帰りま・・・」
三橋は声を震わせながら、 不器用にバタバタと帰り支度を始める。




「!?、 あ、おいっっ、待っててよミハシ! いっしょに・・・」

”帰ろう、” 
と言おうとしたのだが


バタンッ!!!


ゴメンナサイ、ゴメンナサイ、 そういいながら、三橋はうつむいたまま、
栄口の前を足早に去っていった。
外を見たが、姿はもう無い。


栄口は、 ただただ あっけにとられていて。
はえー、足速ェー。 三橋って結構 駿足とみた。



ぽつん、ぽつん、
部室にボールが 点々と転がっている。
シニアの経験もある栄口には、なじみが深い 硬い球。



ほんの一瞬、 でもはっきりと、栄口は見た。


三橋は、ここでボールを磨いていた。
ぺたんと座りこんで、 体を丸くして、 掌に包んで、丁寧に磨いていた。

視界に映った彼の顔は、少しだけ はにかんでいたんだ。



≪ 投手なんて、全員 宇宙人だ。 ≫
さっきの あべの言葉。

(うーん)


宝物をやっと手に入れたように、いとおしそうで、不安そうだった、 三橋の俯いた顔。

(甲子園、 ムリって 即答してたけど)


グラウンドに居たときは、 あんな顔しなかったな。

(泣いてたし)


群馬では、どんなピッチャーだったのだろう。

(贔屓って )


・・・そういやああいつ、 モモカンに ケツバットされてたけど、ケツ…腫れてるかも。

(・・・・よし!)






栄口が

いい薬があるから、 ケツに塗れよー、 と薬を持ち出して
三橋を更にビビらせるのは

次の日の話。

                   (94 丸 くなり丸くなり頑なな球形となって) 

*バックの英語の意味*
過去を生きるな、未来を夢見るな、現在のこの瞬間に
心を集中せよ [釈尊]
栄口くんが 恋に落ちる日は もうすこし先



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