62 花嵐の踊る夜  03



「みい〜、みはっ、し!!! みつけたっ!!」
泣き声に引き寄せられるようにして、 栄口が社の裏に あらわれました。


「うっお!?? さ、さかえぐち、 くん!!」



「ごほっ、よ、よか・・・った・・・っ、げほっ、」
走りすぎてむせ返る栄口の背中を、 三橋は慌ててさすりました。

「だ、だいじょ、ぶ??」

栄口の背中は苦しそうに上下します。
三橋は思わず、汗ばんだその背中に自分の右頬をあてました。
びっくりしたのは栄口です。


「うあ!?ええ?? みみはし??!!」

「ひっええ!?」

無意識の行動に、三橋も自分でびっくりしました。 心臓がどぎまぎしています。
飛びのこうとしたら、右手をすばやく掴まれました。
栄口の手に堅く握られて、手首の動脈がドクドク速く流れ出します。


「こうやって離さなければ、 もうお互いに迷子にならないよなー。」
三橋の手を いっそう強く握って、 栄口は笑いました。


右手を 締めつける 強い感覚に、 三橋は気持ちよさそうに目を細めました。
そしておずおずと 
三橋のほうからも 栄口の手を握り返したのです。







夜に触れて、
灯篭の火が踊る 澄んだ濃紺紫の闇の中、 神楽の音は 一晩中鳴り渡りました。


62 花嵐の踊る夜)

・・・・あまーい。 ・・・日本昔ばなし風。
 
昔住んでいたとある町では 寒い時期の祭りは 子供にも酒を配っていたのですが 今もだろうか。

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