14 ここには居場所がないのに行き場もない


 

 君の言葉は つたないね  彼の言葉は やさしいね  交わす言葉は はかないね      









  「それおいしい?」

 三橋は呼びかけに反応する。 ・・・もしかしなくても・・・ おれに、だよ ね?
 



 「んぐ、・・・んん。」
 ”おいしいよ、”と伝えたかったんだけど。 口の中に食べ物が詰まっていた。
 
 あせって胃の中へ飲み下そうとする三橋を、 相手はニコニコしてみていた。
・・・手伝ってやれよな、見てないで。)
 
  けふけふ、 ンン〜、
 三橋が変な声を出した。
 
 「はい お茶。」

 すい、と
 さりげない仕草で 三橋の口元にペットボトルを差し出す。
 冷たいお茶が、 食道に引っかかったパンを すとんと流して 胃に落とした。
 
 コクリ、上下する三橋の日焼けした喉を、
  (相手は 見ているよーな、 気がする。)


  「おい し い よ! 栄口くんっ」
 
 ああやっと言えた。
 つまりはコンビニの 新作パンの話である。
 ・・・ 美味いよな、そのパン。)
 

 
栄口は、
「気になってたんだけどさ、そのパンもう売り切れてて なかったんだよ。」 と言った。



 実は三橋の手には、 その問題の 新作パンの食べかけが、 まだ手に残されている。
 三橋の脳みそは、 鈍く起動し始めた。


 (そ・・・それは、 栄口くんも、食べてみたいってことだろうか??)

 
 売り切れてたんだって。
 気になってたんだって。
 ・・・美味しいって、いっちゃったし。
 でも、 ・・・でも。ででででも。

 三橋が見かけによらず大食いで食い意地が張っているのは、 野球部内ではすでに 一般常識クイズである。



 勘のよい栄口は、 三橋の心中を察して余りある。

 「あ! そういう意味じゃないからな??三橋。 美味いかどうか、聞いてみたかっただけだって。」
 (あとさ、・・・三橋が 食べているところが見たかっただけじゃねーの?)

 
 
三橋は一瞬、ホッとした顔をしたが、 どうしてだか再び考え込む。




 「・・・みはし?」

 「う、あ、 あの、・・・ど・・・どうぞ・・・」

 「え?」

 パンをひと口大にちぎって、指につまんで。 おずおずと栄口の目のまえに運ぶ。
 あの三橋が。

 貴重な食料を、 他人に分けている!?) 
 
  すこし涙目で、 よだれも垂れてて、 たとえ ひと口分だとしても。
 栄口は 驚いたとも、意外だとも、 そして嬉しいともいえる表情で、 三橋の様子を見ていた。

 
 「う、お? い、いい、の?」
 
喋り方が三橋みたいになってるぞ、 栄口。)



 
三橋は、
 「うん。 あじ、み。」
 
 そう呟いて、
 ふへ、
 
  と表情を緩ませた。





 
「ありがといただきます!!」

 気合と勢いで、
 栄口は、パン食い競争並みに真剣に、 パン切れに喰いついた。

 ・・・・三橋の指ごと。





 「う、ひゃあ !?」

 「あ、ごめん。」

 
「うっわ、もうゆるさねえ!!!」




(14 ここには居場所がないのに行き場もない)

































































































































オレンジの文字の人=泉
 でした。 ある日の昼食・・・ サカミハに 振り回されとる。

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