79 サーチライト浴び歌い上げろアリア(おおきく振りかぶって) |
むかしむかし あるところで きみと おれが であっただけのこと。 |
カタカタ、カタカタ、 と体が震えているのは、 寒さの所為か、 恐怖の所為か。 ・・・おいおい、おれはいじめるつもりじゃあないんだぜ。 叶はすこし、傷付く。
叶は目の前の光景に、慄いた。
ガキ大将にあるまじき感情が彼に芽生えた。 「こいっっ!!」 がしいっ、 と腕を抱え、 と動揺する相手にはお構いなしで、叶はそのモコモコを、自宅へズルズルズルズルと引きずって帰った。 |
叶が最後に見たあの子は、出会った頃のように やはり声もなく泣いていた。 群馬には、晩冬の雪がちらついていた。
廉、と呼ぶ声が、届かない。 くしゅっ、と笑って それは きらきらとした (79
サーチライト浴び歌い上げろアリア) |
柑橘径へ戻る< 小説へ戻る |